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西洋比較演劇研究会 1 月例会のお知らせ

西洋比較演劇研究会 1月例会のお知らせ
新年の、そして今年度最後の例会になります。寒さの中ご参加くださいますようお願い
いたします。
なお終了後、ささやかでありますが、新年の懇親会を予定しております。
日時 2008年1月26日(土)  午後2時〜6時
場所 成城大学 7号館731教室
1 研究発表
関根裕子 「松居松葉による『エレクトラ』日本初演−ホフマンスタールの期待と現実
−」
2 研究発表
浦野 進 「尾崎宏次論序説 〜新劇批評史構築のために〜」 
1 関根氏発表要旨
フーゴー・フォン・ホフマンスタールの『エレクトラ』(戯曲版)は、1913年10月帝国劇
場で、松居松葉率いる公衆劇団によって、日本で初めて上演されてい
る。イタリア人舞踊家ヴィットーリオ・ローシーが演技指導し、女形の河合武雄がエレ
クトラを演じたこの講演について、後の演劇史では否定的な意見が多くみられる。たし
かに内容の技術的な水準が低かったことは否めない。しかし近年、この『エレクトラ』
公演の前後に交わされた松葉や森鴎外とホフマンスタールとの往復書簡の全体像の解明
に努めてきた筆者は、当時の演劇雑誌などに掲載された本公演をめぐる論争の調査を通
じて、この公演の演劇界に巻き起こしたセンセーションの大きさに驚いている。
本発表では、日本や日本人の身体表現に高い関心を持っていたホフマンスタールの「オ
リエンタル」な『エレクトラ』日本公演への期待に対して、日本側がどのような反応を
したかについて、とりわけ「エレクトラの踊り」に着目して、報告する。ローシーの指
導下、女形の演じた、この奇妙な『エレクトラ』をめぐる論争や書簡からは、当時の演
劇界の混乱ぶりが見えてくるだけでなく、ジャポニズムに代表される西洋側の文化危機
意識も視野に入れることで、東西双方の「未知なるものの演出」という皮肉な平行線に
よるずれが見えてくるのである。
プロフィール(せきね ゆうこ):国立音楽大学卒、高校の音楽科教員を経て、ドイツ
文学に転向。1996〜98年ウィーン大学留学、1999年筑波大学大学院(博
士課程)単位取得退学。現在、早稲田大学、明治大学等で非常勤講師、ドイツ語・音楽
文化史を教える。「新出 鴎外のホフマンスタール宛書簡」岩波書店『文学』。
2 浦野氏発表要旨
演劇批評家・尾崎 宏次(1914〜99)は、東京外国語学校ドイツ語科を1937
年卒業後、「都新聞」(後に東京新聞と改称)に入社、文化部で芸能欄を担当、応召し
て南方戦線で従軍、戦後復員して復職、芸能記事の取材活動の傍ら、(お)という署名
で主として新劇の劇評を執筆した。1954年退社後は「読売新聞」の新劇評を担当し
たほか、フリーの演劇批評家として健筆を振るった。1950年代初頭から60年代末
まで、新劇の批評家として最も大きな影響力を持ち、指導的な立場にあったといえるだ
ろう。それは1930年代半ばから、新協劇団・新築地劇団・文学座などの舞台を観続
けて来た体験に裏打ちされた批評精神であり、基本的にはいわゆる新劇運動の擁護者の
立場にあったのだが、一方では教条的な硬直した舞台と、真に創造的な創作活動とを峻
別する柔軟な感受性の持ち主でもあった。その一例が、戦前『火山灰地』というリアリ
ズム演劇の一つの頂点を極めた作品を作り上げた久保 栄が、戦後は『日本の気象』な
どにおいて、明らかに後退した作品をしか生み出せなかったことを鋭く批判した尾崎に
対して、「(お)の字のやつが……」といたずらに感情的な反発をパンフレットで吐き
出した久保の反応などが印象的であった。
 1960年代後半以降のいわゆるアングラ演劇、その延長線上にある小劇場運動には
、一定の理解は示しつつも一線を画す立場をとった。その意味で尾崎はあくまで新劇の
時代の演劇批評家であり、時代的な限界はまぬかれない。宇野 重吉、木下 順二とは
同年生まれのせいもあり、同志的な連帯感によって結ばれていた。宇野の劇団指導者・
演出家としての仕事と、木下の劇作の最もよき理解者であり、後援者であった。ドイツ
語を学んだため、ドイツ演劇に関わる翻訳・紹介が多いが、晩年は中国演劇に深い関心
を寄せ、度々中国を訪れ、オペラ『夕鶴』の中国公演、昆曲『夕鶴』の日本公演の実現
に尽力した。
 戦前の新劇運動を引き継ぎながら、敗戦後50年代、60年代の新劇を一つの演劇運
動として明確に位置づけ、評価するためには、実践者の身近にあってそれを見つめ続け
てきた批評家・尾崎宏次の軌跡を跡付けることが必要であろうと考える。
 発表者は学生時代、尾崎の新聞劇評に疑問を呈する手紙を送ったところ、丁寧な返事
をもらい、それ以来面識を得て、親交を深め、さまざまな面で教示を受けることが多か
った。後年、NHKの劇場中継番組を担当し、毎月の「演劇時評」そのほかで仕事上の
かかわりも持つことになった。
 演劇批評史研究は、上演史研究以上に確立することの困難なジャンルであろう。基本
的な一次資料の収集すら難しい。しかしそれだけに例えば戦後期の整理を今行なってお
かないといけないのではないか。今回の発表は年譜・書誌等の基礎作業から出発する、
第一段階のものとなるだろう。
プロフィール(うらの すすむ):元NHKディレクター(主としてテレビドラマ、劇
場中継番組)。元桐蔭メモリアルホール企画プロデューサー。19世紀フランス・ロマ
ン派演劇、19世紀フランス文学とロシア文学の交流関係を研究。評論に「タタミ的演
劇論」(『悲劇喜劇』所収)、「プロスペール・メリメとロシア」(『個性』連載中)
など。著書に『アジアの民芸』(日本放送出版協会、共著)。翻訳に『戯曲・三銃士』
(アレクサンドル・デュマ作、劇団俳小公演台本)、『ドイツ電撃戦』、『ロンメル対
モントゴメリー』(ともに《ライフ第二次世界大戦史》のうち)など。主な演出作品に
テレビドラマ『らっこの金さん』(水木洋子作、芸術祭優秀賞受賞)、連続テレビ小説
『旅路』、『開化探偵帳』、『鞍馬天狗』など。
西洋比較演劇研究会157-8511東京都世田谷区成城6-1-20
成城大学文芸学部 一之瀬研究室 Fax:03-3482-7740
郵便振替口座番号:00150−2−96887
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*過去ログを以下に掲載しております。ご参照ください。
http://comptheat.sakura.ne.jp/