月別アーカイブ: 2013年11月

西洋比較演劇研究会12月例会のお知らせ

連続シンポジウム「スタニスラフスキーは死んだか?」第二回・日本におけるスタニフラフスキー

日時:12月7日(土)14:00-18:00
会場:成城大学(教室未定)

司会:井上優(明治大学)
講師:藤崎周平(日本大学)
講師:笹山敬輔(日本近代演劇研究)

「スタニスラフスキー・システムの歴史的検証」と題した第一回(2012年12月)は、浦雅春(東京大学大学院教授)・堀江新二(大阪大学大学院教授)両氏を講師にお呼びし、ロシアで誕生したスタニスラフスキー・システムとは本来どのようなものであったか、そしてロシアや海外で現在までどのように用いられてきた、ということについてお話しいただいた。その概要は電子ジャーナル『西洋比較演劇研究』第12巻第2号「例会報告」に詳しく収められている。

第二回「日本におけるスタニスラフスキー」は、藤崎周平(日本大学教授)・笹山敬輔(日本近代演劇研究)両氏をお迎えして、戦前から戦後にかけて日本でスタニスラフスキー・システムがどのように理解され、受容されてきたかについてお話しいただく。

1. 発表:笹山敬輔「戦前から戦後にかけてのスタニスラフスキーの受容」

演技術は、第一義的には演技をするための「技術」であるが、その背景には多様な思想や文化状況が存在している。そのため、スタニスラフスキー・システムのような西洋の演技術が日本に移入されるときには、その演技術が日本の身体観や心理観に影響を与えるとともに、それ自身も影響を受けて変容することになる。それは、受容者側の理解力不足の結果というよりも、その地域における文化状況との交渉であると言えるだろう。日本におけるスタニスラフスキーの受容を考えるためには、それぞれの時代の文化史研究・科学史研究とも接続しながら、脱領域的に論じていくことが必要となる。
本発表では、戦前から戦後にかけてのスタニスラフスキー受容について、三つの時期に分けて論じていく。最初が1910年代から1920年代で小山内薫を中心に、次が1930年代でプロレタリア演劇を中心に、最後が1940年代以降で千田是也の『近代俳優術』を中心とする。その際には、同時代の「身体」や「心」に対する認識の枠組みと照らし合わせながら論じていきたい。

発表者紹介
筑波大学大学院博士課程人文社会科学研究科文芸・言語専攻修了。博士(文学)。著書に『演技術の日本近代』(森話社、2012年)、「モンタージュ理論と演技術――村山知義の「新しい演技」」(岩本憲児編『村山知義 劇的尖端』森話社、2012年)。

2. 発表:藤崎周平「演技基礎教育におけるスタニスラフスキー的手法の実践-RelaxationとRepetition-」

スタニスラフスキー的手法が、日本の俳優養成の現場でどのように引用され、扱われているのか。特に、俳優の基礎教育における実践について報告したい。ここでいう「基礎教育」とは、実際の役作りの前に行われるものであり、演技を包括的に思考し、行っていくための根拠となりえるような訓練のことである。
今回紹介する2例は、1920年代以降、アメリカで展開したスタニスラフスキー・システムから引用された実践である。1つめは、前期の「感覚の記憶」から、リー・ストラスバーグが開発した《Relaxation》、さらには、いわゆるメソード演技が目指す「身体感覚を研ぎ澄ましていく」ために展開する一連の訓練であり、もう1つは、後期の「身体的行動」から、サンフォード・マイズナーが “相手との関係の中から自らの行動を発見していく”訓練として開発した、《Repetition》である。両者を検討しながら、システムの有効性について検討したい。

発表者紹介
日本大学芸術学部教員 専門は演技方法論及び俳優教育
専門学科で俳優教育に20数年従事する。近著に『新演技の基礎のキソ』(主婦の友社)がある。

西洋比較演劇研究会以外の、一般の方のご来聴を歓迎します。会場整備の都合上、前日までにhibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpにご一報ください。

西洋比較演劇研究会11月例会のお知らせ

今回は会場が明治大学となります。奮ってご参加ください。

2013年11月23日(土・祝)14時-18時
会場 明治大学駿河台キャンパス 研究棟4階 第一会議室
※校舎についてはこちらをご参照ください。
※アクセスについてはこちらをご参照ください。
※リバティタワー正面より左手に研究棟への連絡通路があります。

シンポジウム「復讐の想像力に関する演劇の比較研究:セネカの戯曲と法思想をめぐって」

〈シンポジウムの趣旨〉
今回のシンポジウムは、2013年6月に日本演劇学会全国大会(於・共立女子大学)で行われたシンポジウム「復讐の想像力に関する演劇の比較研究」の続編である。前回のシンポジウムでは古代ギリシャ、エリザベス朝、および16世紀後半のフランスの演劇に見られる復讐について検討した。今回はこれら三つの時代の復讐劇をつなぐ存在であり、西洋演劇における復讐の表象に大きな影響を与えたセネカの戯曲、ならびにその背後にあるローマの法思想について、二人の専門家に論じていただく。

シンポジウム・コーディネータ:小田中章浩(大阪市立大学)
〈コーディネータ・プロフィール〉
大阪市立大学大学院文学研究科教授。専門はフランス演劇、表象文化論。著作に『現代演劇の地層——フランス不条理劇生成の基盤を探る』(ぺりかん社、2010年)『フィクションの中の記憶喪失』(世界思想社、2013年)。

パネリスト1: 玉垣あゆ(名古屋大学)
〈発表要旨〉
セネカの悲劇は、後世の復讐悲劇に大きな影響を与えたと言われる。しかしラテン語において「復讐する」を意味する語ulciscor、u(v)indico、pu(oe)nioが、いずれも「罰する」という懲罰の意味を含んでいるように、彼の悲劇では「復讐(revenge)」と「罰(punishment)」が混在し、翻訳においても訳者の裁量に委ねられていると言える。発表では、劇中の言語に着目し、復讐、及び罰に係わる用語(特に「罰」と訳されることが多いpoena)の用法について詳細に見ていきたい。
〈発表者プロフィール〉
名古屋大学ほか非常勤講師。専門は西洋古典学(主にセネカ悲劇研究)。論文として「セネカの『オエディプス』における運命と意志」(『西洋古典研究会論集』21号、2012)「不実な夫の悲劇——セネカ『パエドラ』についての一解釈——」(比較文化研究106、2013)他がある。

パネリスト2: 林智良(大阪大学)
(1)まず、ごく簡単に法学とフィクション研究の関係を整理して自分の議論の出発点を定める。その際に、林田清明等によりつつ「法と文学」という研究潮流が法学に存在することに言及する。
(2)穗積陳重『復讐と法律』に専らよりつつ、現実の法思想・法制度が一般的には加害に対する報復の程度を制限しており、復讐の連鎖を続けさせない方向を目指したことを説明する。
(3)紀元前5世紀の十二表法における(加害への復仇の)同外報復への限定や元首政期(紀元後2世紀頃)の加害者委付制度などの説明を通じて、ローマ法が諸々の法体系の中でも特に復讐の制限に初期から積極的であったことを示す。その一方で、ユーゴスラヴィアのコソヴォ地方など、血讐を奨励する法体系も近代に至るまでヨーロッパにあった旨を(石部雅亮等によりつつ)示す。
(4)そのうえで、セネカの創造した劇世界に現実のローマ法思想・法制度が有した影響の可能性を、ギリシャ的素材に伏在するローマ的な地金を慎重に見分けつつ、見いだす。
〈発表者プロフィール〉
大阪大学大学院法学研究科教授(ローマ法専攻)。博士(法学)。1962年生まれ。京都大学法学部卒業・京都大学大学院法学研究科博士課程後期単位取得退学。主な著書に『共和政末期ローマの法学者と社会 -変容と胎動の世紀』(法律文化社、1997年)がある。