西洋比較演劇研究会1月例会のお知らせ

【会場:慶応義塾大学日吉キャンパス】

いよいよ2013年もあとわずかとなりました。今年もお世話になりました。早いもので、今年度の例会のお知らせです。お忙しい折とは思いますが、奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。
※なお、最初の辻佐保子氏の発表は、質疑も含めて、英語のセッションとなります。

日時 2014年1月11日(土) 午後2時〜6時
会場 慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎2階大会議室

■住所
〒223-8521 神奈川県横浜市港北区日吉4-1-1
■交通アクセス
・日吉駅(東急東横線、東急目黒線/横浜市営地下鉄グリーンライン)隣接
※東急東横線の特急は日吉駅に停車しません。

〔研究発表1〕※英語セッション
(日)身体の現前性の称揚——ミュージカル『フェイド・アウト-フェイド・イン』における物語内容と形式の捻れに着目して 
(英)”The Affirmation of Physical Presence–An Analysis of Skew Lines Between the Narrative and the Form in Fade Out-Fade In

<発表者>辻佐保子

<要旨>
 本発表は1964年初演のミュージカル・コメディ『フェイド・アウト-フェイド・イン』の作品分析から、ミュージカル映画のバックステージを演劇として表す意義について論じるものである。ヒット作『ベルがなっている』(Bells Are Ringing, 1956) の制作者たち(脚本と歌詞:ベティ・コムデン&アドルフ・グリーン、作曲:ジュール・スタイン)が再結集し、主演を当時のTVスターであるキャロル・バーネットが務めたにも関わらず、『フェイド・アウト-フェイド・イン』はこれまで「スター主義的な作品群の一つ」及び「1930年代のミュージカル映画への諷刺」といった評価に留まり、詳細な研究はなされてこなかった。しかしながら、脚本家コムデン&グリーンの作風とも言われる形式やメディウムへの自己言及性に着目した時、ミュージカル映画の内幕を演劇として描くという本作に内包される捻れは看過しがたい。本発表では、これまで精密に論じられてこなかった作品の全体像を見直した上で、物語内容と形式との関わりを分析していく。そして、『フェイド・アウト-フェイド・イン』が映画の世界を取り上げることで逆説的に身体の現前性を前景化させ、演劇の特質として肯定しようとした作品であることを指摘して、再評価への端緒としたい。

〈プロフィール〉
慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。早稲田大学文学研究科表象・メディア論コース博士後期課程在籍。アメリカン・ミュージカルにおける楽曲や歌うという行為の担う機能について、ベティ・コムデン&アドルフ・グリーン作品を中心に研究している。論文に「”Time is Precious Stuff”–ミュージカル『オン・ザ・タウン』における時間表象についての考察」(2012年)、「電話・俳優・「パフォーマティブ」な演技のモード——ミュージカル『ベルがなっている』論」(2012年)など。

〔研究発表2〕
S.アンスキ『ディブック』とユダヤ演劇の近代 
<発表者>村井華代

 一般に、ユダヤ民族は偶像崇拝の禁止ゆえに、祭日行事であるプリム劇を除き、1870年代のイディッシュ演劇創始まで民族独自の演劇文化を形成してこなかったと言われる。そのような土壌に、19世紀末の4半世紀、2つのジャンルの演劇——ディアスポラ文化としての「イディッシュ語演劇」と、シオニズム運動の一環としての「ヘブライ語演劇」——が誕生したことについては、近代演劇全体の視野からもっと議論がなされてよい。この2種の近代演劇の在り方とその意味を、我々はどのように位置づければよいだろうか。
 本発表では、その2ジャンル双方にとっての記念碑的作品である戯曲、S. アンスキ(S. An-sky, 1863−1920)の戯曲『ディブック——あるいは、ふたつの世界の間』を取り上げ、その複雑な成立の過程から、ユダヤ演劇の近代の一様相のあぶり出しを試みる。「ディブック」とは、ユダヤの伝承に登場する、生きた人間に憑依する汚れた魂をいう。アンスキは、1910年代の激動のロシアで、2年に渡るロシア帝国内の民俗学研究旅行を通じてこれを劇化、引き裂かれた恋人に憑依する青年の霊としてドラマ化した。「メロドラマ」と言われることも多いこの劇のモダニズムと、ユダヤ演劇の2ジャンルとの演劇の関係について、作者の人生の在り方と共に考察したい。
 なお『ディブック』は、「エス・アンスキイ」作「デイブツキ」(中川龍一訳)として、『西班牙・猶太劇集』(『世界戯曲全集』第39巻「西班牙・猶太篇」、1930)邦訳刊行されている。

〈プロフィール〉
共立女子大学文芸学部教員。国別によらず、演劇現象学、反演劇主義とキリスト教神学等、西洋演劇理論を扱ってきたが、現在の主たる関心領域は、ユダヤ・イスラエル演劇。

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